賢者よりをこめて


                        後編




 くすくすと怪しげに笑いつつ、そっとエイトの毛布に手をかけ――唐突に膨れ上がった殺意に慌てて飛びのき、呪文を唱える。

 「フバーハ!」

 魔力の壁が現れると同時に、冷たい風が横切っていく。咄嗟に唱えた呪文のおかげと、もともとのレベルもあってか、ダメージは
ほとんどない。

 それでも多少引きつりながらも、サイドテーブルに目をやれば、そこには冷たいチーズをもちゃもちゃと食べながら、ルネを睨みつ
けているトーポの姿。

 「うふふふ・・・・。そういえば、あなたがいたのよね。コネズミちゃん」
 
 じり、と一歩引きつつ、トーポを見据える。彼は袋から新たなチーズを取り出して、威嚇しながら構えていた。小さな邪魔者の出現に
どうしたものかと少し考えて、

 「ラリホーマ」

 ぽと。

 あっさり呪文で眠らされ、倒れるトーポ。そろそろと近寄って、眠ったのを確認するとにやりと笑ってその背を撫でる。

 「エイト様の大事なペットだから、傷つけたくないのよね。ぐっすり眠っててね、コネズミちゃん」

 言って振り返り、すやすや眠っているエイトの毛布を剥ぎ取ると、起こさないようにそっとベッドに乗り上げた。

 「うふふふふふふ。どうしようかしら。どこまでやっちゃおうかしら」

 楽しそうに呟きつつ上着に手をかけて―――

 「ソコまで。とっととエイトの上から降りなさい」

 絶対零度のような冷たさを含んだ声に、ルネの手が止まる。

 隠すことのない殺意のオーラを感じ取り、ギ、ギ、ギギィ、とまるで錆付いた扉のようにぎこちなく首を動かしそちらを見れば、怒りの
形相で仁王立ちしているゼシカと、呆れたような顔のククールの姿。

 慌てて飛び退き、とりあえず笑って誤魔化す。が、すぐにゼシカに腕を捕まれ部屋の外に放り出された。

 「なぁにをしようとしていたのかしらぁ?」

 「え。えっと。ちょっとした女の子同士の可愛いスキンシップ? とかそんなのをしようかなって思っただけで・・・」

 無理のある言い訳に、ゼシカがこれ以上ないくらいの極上の微笑を浮かべる。

 「あら素敵。だったら私とも『スキンシップ』しましょうか。町の郊外辺りで」

 溢れんばかりの殺意を纏ってのお誘いに、半分涙目になりつつルネがぶんぶん首を振る。隣にいるククールもあまりの殺意に、多少
顔を引きつらせているが、止めようとはしない。と、ガチャリと扉が開いて、エイトが顔を出した。

 「なんか・・・あったの?」

 眠たそうに瞼をこすって訊いてくるエイトに、ゼシカは表情を和らげると、なんでもないと告げると、横でぷるぷる震えているルネの腕を
がっしと掴む。

 「それじゃあ私たちもそろそろ行きましょうか?」

 宣言に、ルネの顔が一気に青ざめていく。本能、というヤツだろうか。彼女には逆らってはいけない、と、心が叫んでいる。

 「ひぃぃぃぃぃっ! すみませんごめんなさいもうしませんからぁぁぁぁぁっ」

 必死に謝るものの、捉まれた手からは力が抜けるコトはなく、むしろより強く握られる。

 「? え、なに、どうしたの? ケンカ?」

 慌てて逃げ出そうとしているルネを見て、流石に目が覚めたらしいエイトが不安そうにゼシカを見つめるが、彼女はふるふると首を振る。

 「気にしないで。今から女の子同士の『スキンシップ』するだけだから」

 「どうせなら一緒にお風呂入って背中流したり、ベッドの中で朝までおしゃべりとかそういうのがいいですぅぅぅぅっ」

 「心配しなくても、朝まできっちり相手してあげるわよ」

 「たたた、助けてエイト様っ」

 「え、えと・・・。よくわかんないけど、ルネ泣いてるし・・・。ゼシカやめてあげて?」

 縋るような目で見つめられ、とりあえず止めに入る。数秒迷ってから仕方なくゼシカが手を離すと、勢い余ってルネがよろめいた。

 「きゃ」

 「おっと」

 咄嗟にククールが手を伸ばし、彼女の体を支える。

 礼を言って慌てて離れるルネに、ククールは柳眉を寄せるが、すぐにいつもの顔に戻ると「ああ」とだけ言ってエイトの背を押し、部屋の
中に戻る。

 鍵を確認してからため息をつくククールを見て、エイトは不安そうに彼の名前を呼んだ。呼ばれた彼はエイトを安心させるように柔らかく
微笑むと、扉を見ながら肩を竦める。

 「・・・さすが腐っても賢者だな、と思ってさ。
 鍵がなくても、扉を開ける呪文ってのがあるらしいけど、どうもルネはソレが使えるらしい」

 「そんな呪文が? すごいね〜」

 「ああ。他にも、オレ達が知らない呪文も使えるみたいだな。・・・・でも」

 「・・・・・でも?」

 そのまま押し黙ってしまった彼に、エイトが聞き返すが、ククールは「なんでもない」とエイトの頭を撫でる。

 「・・・明日、はっきりさせるから、エイトは安心して?」

 よくわからないまま、それでもククールの言葉を信じて、エイトは素直に頷いた。




 明けて次の日。いつものように朝食を食べて、いつものようにトロデの待つ場所まで向かい、さぁ出発、となったところでククールが
待ったを掛けた。

 何事かと全員が訝しむように振り返ると、ククールはルネを見つめ、にやりと笑う。

 「おまえ、男だろ。なんで女の格好してるわけ?」

 ククールの言葉に、その場の空気が一瞬にして凍りつく。全員がきょとんとし、彼の言った言葉を頭の中で反芻するが、思考回路は
うまく動かない。

 どれくらいそうしていただろうか。やっと事態を理解した仲間たちの疑惑の視線がルネに集まり、硬直していた彼女も我に返った。

 「や・・・いやですね。こんなに可愛いコに男だなんて・・・。ククールさんったら昨日のコト、もしかしてまだ怒ってます?」

 ぎこちなく笑いながら、そう返すルネに、ククールは無言で歩み寄る。

 「最初に会ったときから、なんか違和感があったんだよな。オレ様の女の子センサーも働かなかったのは、まぁ・・・そういう趣味
だからかな、と思ったんだけど・・・」

 じりじり下がっていくルネを睨め付け、ルネの胸を見つめる。

 「昨日、ちょっと体を支えただろ。その時、気が付いたんだ。その胸、中身はオイルパットだろ」

 「そそそ、そんなコトないですよっ。というかコレってセクハラ・・・!」

 「その感触からして、たぶん三つは入ってる」

 「う゛っ?!」

 「しかも、ほんのり匂いがするから、たぶん、ベルガラックの裏道にある『コラール』の春の新製品、バラの香りつきと見たッ」

 「で・・・できるッ! ソコまでわかるなんて・・・!?」

 意味のよくわからないやりとりに、全員がなんと言っていいかわからず、そのまま様子を見守る。というか、ドレにたいして突っ込ん
で良いのか、もはやよくわからない。

 ククールがソレと見抜けるのはすごいとは思うが、どうしてそんなに詳しいんだとかは訊きたくない。訊いたらものすごく後悔しそうな
気がする。

 「認めたな」

 にやりと笑うククールに、ルネは小さく呻くが、やがて観念したのか小さく息を吐き出した。

 「そうです。私、男です。言わなかったのは悪いとは思いますけど・・・」

 開き直ったのか、そう言って微笑む彼女―――いや、彼に、ゼシカが顔を引きつらせる。

 「ほ、ホントに男だったんだ・・・。でもどうして・・・そんな女装なんて・・・」

 「女装っていうか・・・。私、もともと遊び人なんで、こーいうの気にしないっていうか。
 それにお買い物するときかは、この格好のほうがなにかとお得なんです」

 「・・・あの。それじゃあ最初にエイトを旦那様だとか言ってたアレって・・・どういう・・・」

 訊きたくはない。けれど、訊いておかないと、この先どうしていいのわからない。

 視線を逸らしつつそう訊けば、彼女は照れたように微笑み、

 「私、女も男も両方イケるんで。相手がどっちも平気なんです」

 ズザザザザッ。

 かなりの問題発言に、エイトとククール以外がものすごい速さで距離を置く。

 「世の中って世の中って」「あっしはもうなにがあっても驚かないつもりでやしたが、これは予想外でげす」「わしの可愛い姫になんか
悪い影響がないかのぅ」「ヒン」

 四人で輪になり、なにやらぼそぼそと話している声が聞こえてくるが、ルネは気に留める様子もない。むしろ、傍で呆然としているエイ
トに抱きつくと、瞳を潤ませる。

 「エイト様ぁ。こういうルネは嫌いですか?」

 「え? え、えっと。個人の趣味ならいいんじゃないかなぁって・・・」

 「じゃあ一緒に旅を続けてもいいですよねっ」

 「残念ながらそうはいかないんだよ」

 エイトからルネを引き剥がし、その前に立ちはだかると、不敵な笑みを浮かべる。

 「どういう意味ですか」

 「女だったら放っておこうかと思ったけど、中身が男となったら話は別なんでね。
 あんたがエイトに抱きつくのをみて、いつも通りに一緒に旅ができるほど、オレの心は広くないんだよ」

 「あら。でも私ってば結構な戦力じゃないですか。
 今抜けたりしたら、追いかけている敵さんを倒すの、辛くなるんじゃありませんか? ねぇ、王様?」

 いきなり話を振られて、トロデが口篭っているとルネは「ほら、王様もそう言ってます」と胸を張る。
 
 「そーいうわけですし。私はエイト様と一緒にいたいしっ。だから絶対―――」

 「うん。だから、オレと決闘でもして決めようか」

 『へ?』

 ルネの言葉を遮り、そう言うククールに、また全員が声をハモらせる。

 「勝負はいたって簡単。バトルして相手がまいりましたって言ったら、勝ち。
 もちろん、オレが負けたら、このままパーティにいてもいいってコトでどう?」

 「ちょっ、ちょっとククール!」

 慌ててゼシカが駆け寄ると、彼の腕を引っ張る。

 「相手はあんたより、レベル高いのよ!? しかも、私たちが使えない呪文だってバンバン使えるわッ!
 勝てる見込みあるの!? せめて得意のイカサマポーカーにしないよっ!」

 「いやいやいや。ルネは自分の力に絶対の自信があるだろ? ポーカーで勝負しても意味がないんだって」

 「だからって!」

 「大丈夫だって。ククール様を信じなさい」

 そう言われてしまっては、止めるコトはできない。それでも心配そうに見上げてくるゼシカに、「立会いよろしく」と言うと、歩き出す。

 エイトも慌ててククールの後を追うと、彼はぽんぽんとエイトの頭を撫でると、心配するなと笑みを浮かべる。

 ひらけた場所に出ると、ククールが「ここらでいいか」と呟き振り返る。ルネも頷いて前に歩み出ると、口元を笑みの形に歪めた。

 「とりあえず、ザラキとザラキーマは使わないですから、安心してください」

 「そりゃどうも。つーか全力でかかってきたら? あとで『アレは全力じゃないらやりなおし』とか言われても困るし」 

 「・・・そんなコト言って、後悔したってしりませんよ」

 「へぇ? じゃあ、負けても言い訳しない?」

 「しませんっ。というかもう手加減しませんっ! メラゾーマ!」

 軽口で返すククールの態度が気に入らなかったらしく、いきなり高等呪文を唱えて解き放つルネに、ククールはバギクロスを唱えた。

 生み出された炎に風がぶつかり、ククールを飲み込む。そんな光景を思い浮かべて、思わずゼシカが小さく声を漏らす。

 が、風は炎を吸い上げるように巻き込むと、そのまま巨大な火柱となって掻き消えた。

 なにが起きたのか理解できずにいる間に、ククールは剣を抜いて一気にルネとの間合いをつめると、剣を振り下ろす!

 襲い来た一撃を咄嗟に杖で防ぐと、ルネは急ぎ呪文を唱えて解き放った。

 先ほどとは違う炎のうねりがククールの周辺に現れたかと思うと、一気に燃え上がり彼を包み込む。

 「ククール!」

 エイトが悲鳴に近い声で名前を叫ぶ。その途端、炎が風の呪文に押し返されて、掻き消えた。それを見て、ルネが舌打ちをする。

 「・・・バギ系で風の結界代わりですか。そう来るとは思いませんでした」

 「や。押し返せるとは思わなかったけど。うまくいってよかった」

 悔しそうに唇を噛むルネに、苦笑を浮かべると、剣から弓矢に装備を変えて矢を引くと、一撃が腕に直撃する。

 一瞬痛みに顔を顰めるものの、ルネはすぐに次の呪文詠唱に入り、言葉を舌に乗せた。

 唱えると同時に、すさまじい爆音が響き風が土砂を舞い上がる。あまりの爆発の威力に、エイト達も何歩かよろめくが、なんとか踏み
とどまり、様子を伺う。と、煤けた場所の中心に、肩で息をするククールの姿を見つけた。

 止める間もなく、今度は氷の柱がククールに襲い掛かる。このままじゃまずい。エイトがそう判断して止めようとするのを、ゼシカが止める。

 「大丈夫。あいつ、回復呪文使えるし・・・!」

 「でもっ! ククールがっ・・・どうしよう、ククールになにかあったら・・・!」

 信じてはいるが、もともと彼の体力は低い。あんなに強力な攻撃を食らい続けるのには、無理がある。現に、今、彼はマヒャドの攻撃でその
身を赤く染め上げていた。

 もともとの赤い騎士団服が、ドス黒い赤で染まっていく。あんな姿を見るのは始めてで、エイトの動揺に拍車を掛けていた。

 「ククールが・・・、いなくなったら、いやだよお・・・」

 声を震わせて泣きそうになっているエイトを宥めつつ、二人の戦いに目をやる。と、もうもうと上がる爆煙の中に回復呪文を自分にか
けているククールの姿をみつけた。

 彼はすぐに弓を構えると、ルネに向かって矢を放つ。が、矢はすんでのところでバギクロスに押し返されて届かない。

 それを見てとると、ククールは装備を剣に変えて呪を紡ぎ解き放つ。

 「バギ!」

 風が舞い上がり、ルネの周辺に吹き荒れて視界を奪う。その隙にルネの持っていた杖を弾き飛ばす。それに気が付いたルネが地を
蹴り、後ろに逃げる。だがククールはすぐに追撃をかけると、剣を鞘に収め、そのまま胴に一撃を食らわせた。

 重い一撃に息をつまらせるが、それでもなんとか立ち上がり、反撃する為に呪を紡ぐ。

 「イオナズン!」

 が、呪文は発動することなく、声だけが虚しく響く。驚きに目を見開き、思わず自分の掌を見つめたところで、ひたり、と冷たい金属が首
筋に押し当てられる。見上げれば、にやりと意地悪く笑うククールの姿。

 「魔力が切れたな」

 「・・・っ・・・!」

 どうやら図星だったらしく、ルネが睨みあげてくる。

 「オレの勝ちだな」

 そう言うと、剣を鞘に戻してエイト達を振り返り、手招き。弾かれたようにエイトが走りより、二人に回復呪文を掛けてほっとしたように息
をついた。

 「か、勝手に決めないで下さいっ。私、まだ戦えますっ」

 しゃがみこんだままククールに食って掛かる。が、ククールはやれやれとばかりに肩を竦めるると、口を開く。

 「高等呪文は、魔力を相当使い込む。あれだけ連発したら、たぶんもうメラすら使えないんじゃないか?」

 「そ・・・それは」

 「戦いの最中、オレが弓であんたの魔力を吸い取ってたのも全然気が付いてなかったし」

 「え?!」

 「ルネが使える魔法はオレ達が知らないモノが多くて凄いとおもうぜ。けど、あまりにも実戦経験がなさすぎる。
 賢者としては、半人前以下ってトコじゃないか?」

 「だ・・・だったら、これからエイト様と一緒に経験をつみますっ」

 「悪いけど、無理。あんた、すぐに派手な呪文を使いたがる。実際、エイトの命令以外は、さっきみたいな攻撃してたしな。
 ついでに魔力が途切れると、とたんになにもできなくなる。これじゃあ一緒に旅をしたら、ただの足手まといだ」

 「な、直しますっ」

 なおも食い下がろうとするルネを見て、ククールが顔を顰めたその時。

 と、無言で事の成り行きを見守っていたヤンガスが、ルネに近寄ると、いきなり、びしぃっ! とルネの額にチョップを炸裂させた。

 恐らく手加減はしたのだろうが、エイトに次いでバカ力なヤンガスの一撃。相当痛いに違いない。

 現にルネは額を両手で覆ってカタカタフルフル震えつつ、俯いてしまっている。

 「ガタガタガタガタうるせぇやっ! てめぇ、勝負の前に言い訳しねぇって言ってただろうがっ!」

 「ヤ、ヤンガス、今のはちょっと・・・あんまり」

 「兄貴は黙っててくだせぇっ!」

 言うと、まだふるふる震えているルネを振り返り、

 「てめぇも男なら、男らしく、きっちり約束を守れってンだ!」

 その叫びに、トロデ王が小さく「ゲルダとの約束を破ったやつの言うコトじゃないのう」と呟くが、あえて聞こえなかったというコト
にして、ヤンガスはしゃがみこむルネを見下ろす。

 「・・・・お父様にも・・・・・・ぶたれたことないのにぃ・・・」

 「そりゃ相当甘やかされてたんだな」

 ルネの言葉に、ヤンガスが苦虫を噛み潰した表情になるが、次の瞬間凍りつく。

 「・・・男らしくて、す・て・き・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」

 ゆっくりと顔を上げたルネの顔は―――蕩けたようにヤンガスを見つめつつ、頬を染めていた。

 「私、今までこんなに男らしい殿方はみたコトないです・・・。ヤンガス様・・・」

 「とのがた」

 「様って」

 「というかまさかをい」

 ゆらりと立ち上がると、両手を胸元で組み、じりじりとヤンガスに近付いて行く。

 「あなたこそ、私の正真正銘の未来の旦那様っ」

 『そぉ来たかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 思わず全員で大合唱。

 「ああっ、お待ちになって、ヤンガス様〜!」

 「来るなぁぁぁぁぁぁ!!!」

 絶叫しつつ、普段のスピードからはありえないほどの速さで逃げていくヤンガス。そしてそれをもの凄いスピードで追い上げて
いくルネ。二人の姿が豆粒ほどになった頃、全員揃って地に倒れこんでしまった。

 「・・・オレの苦労って・・・一体・・・・?」

 「やめましょう・・・。なんか虚しいわ」

 「あ・・あはははは・・・・・ははは・・・・」

 ぐったりしている三人を労わる様に、トロデが背を叩きつつ、視線をはるか彼方へと向けた。

 「それにしても・・・・・帰ってこれるかのぉ・・・。ヤンガス」

 ―――問いには誰も答えられなかった。




 結局夕方まで待ったがヤンガスは現れず、仕方なく町へと戻る。彼がなんとかルネを説得して戻ってくるのを祈りつつ、宿屋へと
戻り、記帳する。

 と、横からククールが顔を出し、「シングル二つと、ダブル一つ」と女将に告げた。

 「ヤンガスの部屋、一応な」

 「あ。うん。ありがと」
 
 エイトが女将から鍵を受け取ると、その中の一つ―――ダブル部屋の鍵を取り、にっと笑う。

 「今晩も一緒の部屋でいいだろ?」

 「え」

 「エイトはイヤ? オレと同室」

 問われて、エイトは顔を赤らめると首を振る。

 「・・・・・僕も、一緒の部屋がいいなって、思ってたトコ」

 その返事に、ククールが嬉しそうに微笑んだ。








 蛇足ながら、それから何日かして出会ったルネは、何故かゲルダを「お姉さま」と呼び、嬉々として働いていたという。



 ―――なにがあったのかは、推してしるべし。









 これのドコが八万記念なんだと聞かれたら、管理人は黙って下を向くのみです(汗)

 書きたかった話と、思い切りかけ離れて本気でどうしようかと思いました・・・・。

 す、すみません。

 次はクク主思い切り頑張ります。





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