(注)今回のお話は、四万hitバージョンのエイトさんとククールさんなので、いつもと性格がちょっと違います。






























 エイトには怖いモノがなさそうに見える。

 ダンジョンに入るときもさきに自分で様子をみて、仲間を呼ぶ。

 ゼシカが苦手なぬるぬるな魔物でも平気で殴りかかるし、ゴーストが出ても、あっさり剣でなぎ払ったりする。

 聞いた話しでは、宿屋で出たゴキブリが、ゼシカ達に向かって飛んできた時も、思わずゼシカは悲鳴をあげたが、
エイトはすばやくスリッパで叩いて退治したらしい。

 はっきり言って、まったく女らしくない。これは本人が意識してそうしているわけではなくて、どうも育った環境らしく、
やたらに男っぽい行動をしたりする。

 エイトを育てたやつの顔がみていたい。そして一言言ってやりたい。

 せめてもう少し、女のコらしく育てられなかったのか、と。

 もっとも、城が呪われた今となっては、その育て方が吉と出ているわけだから、あんまり文句も言えないかもしれな
いけど。

 そんなコトを考えつつ、船の甲板ですやすや涎たらして寝ているエイトをぼんやり眺めながら、思い出す。

 旅を初めて暫くして、エイトが実は女だと知った。

 と、言っても、本人は隠しているつもりはまったくなかったと言い、ゼシカには「ホントに気がついてなかったのね」と
笑われた。

 どうもヤンガスやゼシカはとっくに知っていたらしい。

 「なんで言わなかったんだよ?」
 
 知っていたら、もう少し優しく扱っていたのに、と言うと、エイトはふるふると首をふり、

 「だって自己紹介で『僕は女です』って言うの、変じゃないか。
 それに、優しくなんて扱ってもらわなくて、いいよ。近衛兵に男も女も関係ないでしょう」

 そう言われて、なんとなくむっとしたのは覚えている。

 「ふーん。わかった。じゃあ、これからはオマエを、男として扱うってコトで」

 「うん。よろしく」

 それで結局、エイトのコトは女として見ない、と心に決めて早数ヶ月。

 ・・・・・・それがどーして、エイトの裸で反応しちまったんだ。

 数週間前の出来事を思い出し、深くため息。

 ドレス姿や水着で可愛い、と思ってしまったコトはもう認めてしまうとしても、色っぽさのかけらも無いエイトの裸で、
反応してしまった自分が情けない。

 暫く女を抱いていないせいだろう、と必死に自分を慰めて、やっとのコトでたどり着いた町。

 酒場でわりとタイプの女を引っ掛けて、差し出されるまま頂いて。

 ・・・・・・すっきりしたはずなのに、エイトの顔をみた途端に、またなんだかイライラしてきた。

 相変わらずすぴすぴ眠っているエイトを見て、さらにむっとする。

 ちくしょう、オレがこんなに悩んでいるのに、能天気に惰眠をむさぼりやがって。

 つーか見張りがそんなに安眠してどうするか。起きろ。

 「・・・キアリク」

 呪文を唱えると、ぱっとエイトが目を開いて、慌てたようにきょろきょろと見渡した。、

 「・・・あれ?」

 「どーした」

 「いま、僕・・・・・・あー、いや、なんでもない」

 笑って誤魔化して、剣を抱えなおして海に視線を投げる。きっと、ホンの一瞬眠っただけ、とか思っているんだろう。

 そのまま暫く互いに無言で海を眺めていると、スカモンがいるという、小島が見えてきた。






 やっとのコトでスカモンを倒し、島にいるミミックの群れを蹴散らして町についた時には、もうだいぶ遅い時間だった。

 疲れきっていたので、食事はいらない、と言ったらゼシカに怒られたのでしぶしぶ食堂へ。

 トロデ王と馬姫様に食事を運びに行っていたエイト達も戻ってきたので、そのまま食事をしつつ、明日はどうするかと
作戦をたてる。

 いつもならこの話しが終わった時点でナンパに行ったりするけど、今日は流石に疲れていて、そんな気にならない。

 まっすぐ宿屋に帰って、とっと寝るに限る。

 そう言ったら、ヤンガスに「できるなら、これからずーっとそうしてて欲しいでげすな」とイヤミを言われたりしたけど。

 ともあれ、今日はエイトと同室。風呂の時間がかなり短いエイトに先に入ってももらい、オレはのんびりと後から入る。

 だいたいその間にエイトは道具の整理をしたりして、オレがあがってくるのを待っているのが、いつもの光景。

 今日ものんびりと湯に浸かった後、髪を拭きつつ扉を開けて―――・・・

 開けたら、変な光景が目に入ってきた。

 何故かベッドの下に散乱している薬草やらまんげつ草やら毒消し草。

 その他のアイテムも床に散らばっている。なんか賊が入って散らかしていったみたいだなぁ。

 ・・・・・・いったいなんで、こんなコトに?

 エイトの姿を探すと、これまた何故か部屋の隅で壁にへばりついてぷるぷると振るえて、一点を凝視している。

 なにをみているのかと視線を追えば、床に上に黄色と黒の警戒色カラーなクモが、一匹。

 かなりでかいそのクモをじっと見つめたまま、動かないエイト。

 ・・・・・・ええと。これはいったい何事なんでしょうか。

 いまいち事情が読めないまま、エイトを呼んだ。

 その次の瞬間、顔を上げたエイトは泣きそうな顔をするとクモを指差して、

 「ク、ク、ク、クモがいるっ!」

 「うん。見ればわかる。・・・で、おまえはなにしてんの」

 「退治しようとして、追い込まれました」

 ・・・うわぁ。近衛兵がクモに追い込まれてる。滅多に見られないな、こーいうの。
 
 「え、えっと、僕の代わりに、退治して、くれる、とうれしい、な、とか思ってます」

 声が裏返ってる。

 「なに、おまえ、クモ怖いの?」

 意外だな、おい。あのエイトがクモでビビッてるとは。

 ってことは、この部屋にばら撒かれているアイテムは、クモに驚いたエイトがクモ相手に威嚇して投げたモノか。

 ・・・・・ちょっと見たかったかも。

 「い・・・いや・・・、怖いっていうかそのなんていうか・・・ひっ・・・」

 話しているうちに、クモがじりじりとエイトに近寄ると、大げさなくらいエイトが更に身を引いて壁へばりつく。

 「怖くないなら、頑張れ。靴で踏み潰せば、簡単だぞ?」

 そう意地悪を言うと、エイトはふるふると首を振って、更に助けを求めてくる。

 「そっ・・・、そこをなんとかっ」

 「近衛兵がクモくらいでビクビクするなよ」

 「・・・う・・・」

 言われて、エイトはクモに視線を投げ―――

 ぴょんっ。

 タイミングがいいとしか言いようがない。

 クモはエイトの視線を感じたとたん、大きく跳んで、エイトのズボンにくっついた。

 「・・・・・・・・・・っ!!

 エイトは一瞬硬直すると、へなへなとその場に崩れ落ちた。
 
 驚きすぎて、腰でも抜けたか?

 しょうがない、そろそろ助けてやろうか。そう思って近づいて―――今度はオレが硬直する。

 「・・・ふ・・・・ふぇ・・・っ、・・・えっ・・・・ひっく・・・・」

 ぼろぼろと大きな瞳から涙をこぼしている、エイト。って・・・な・・・泣かせた!? 

 え、もしかしなくても本気で泣いてる?

 「う・・・ひぃっ・・く・・・、ク、クモ・・・クモが・・・クモが・・・・・ふっ・・・・・・」

 「うわーっ!?」

 慌てて駆け寄ってクモを払いのけて、泣き出してしまったエイトを宥めつつ、持っていたタオルが涙をぬぐう。

 「もういないからっ。クモはもうどこかに行ったからっ!」

 「うっく・・・・・・いない・・・・?」

 「そ、そう、いないっ。ほら、見てみな。いないだろっ?」

 そう言って、さっきまでクモがいた場所を指すと、エイトはまた泣きだしてしまう。

 あああああっ、なんでまたそこで泣く!

 エイトに泣かれる、という予想外の出来事に、オレもパニくっていたのかもしれない。

 咄嗟に手を伸ばしてエイトを引き寄せて抱きしめると、頭や背中を撫でる。

 「もう大丈夫だから。ごめんな、こんなに怖がってたなんて、わからなかったんだ。ホントごめん」

 たかがクモくらいでこんなに泣くなんて、想像もしていなかった。

 腕の中でしゃくりあげて泣いている、というのも、未だに信じられない。

 よっぽど怖かったのか、しがみついてくるエイトを、ぎゅっと抱きしめる。

 ・・・こーして抱くと、やっぱり女のコなんだなぁ。・・・・・・細いし軽いし、柔らかくてあたたかい。

 どこか混乱したままそんなコトを考えつつ、エイトが落ち着くまで暫くそうやって抱きしめていた。






 ・・・・・・どれくらいそうしていたか。ようやく落ち着いたらしいエイトが、ゆっくりと体を離す。

 「・・・・エ・・・エイト?」

 恐る恐る声をかけると、泣きはらした目で見上げてくる。

 「ごめん・・・」

 掠れた声でそう言うと、申し訳なさそうに瞳を伏せてしまった。

 「・・・・・・だめなんだ。どうしても、アレだけは、・・・こ、怖くて、どうして、も・・・」

 思い出したのか、声を震わせて言うエイトに慌てて言葉を紡ぐ。

 「いや、オレが悪かったんだし、おまえが謝る必要はないだろ?」

 「いつまでも、怖がってる、僕がいけないんだ・・・」

 そう言って離れようとするエイトの肩をつかんで引き寄せる。

 「・・・そーかもしれないけど、でも、今のはオレが全面的に悪いんだ。
 だから、エイトが謝る必要はないんだって」

 「でも」

 「いいからっ。おまえまだ震えてるし、もう少し落ち着くまで・・・な?」

 顔を覗きこんで言うと、小さく頷いて引き寄せられるまま胸元に体を預けてくる。

 「・・・・・・・・・・・・・・なぁ」

 「なに・・・?」

 「その、さ。おまえ、どうしてク・・・いや、アレが苦手なの?」

 ゴキブリですらスリッパで叩きつぶすようなヤツが、どうしてクモでそんなに取り乱すのかが、不思議でしょうがない。

 ・・・いやまぁ、誰にだって苦手なモノくらいあるだろうけど。

 そんなコトを考えていると、エイトがぽつぽつと小さな声で語り始める。

 訊けば、記憶を無くしたエイトは、草原をうろうろするうちに森にたどり着き、木の下でぼんやりしていたそうだ。

 と、目の前にクモの巣をみつけのだが、ソレがなんなのかわからず、好奇心に駆られて触れた。

 その途端、クモ(エイトの記憶によると、かなりでかかったらしい)が現れて、エイトの手に飛び乗ったと言う。

 這い回るクモの感覚があまりに気持ち悪くて、振り払おうとしたがなかなか離れず、パニックを起こしたらしい。

 泣きながら走り―――魔物に襲われ、死にかけた。

 その時のトラウマから、クモを見るとどうしてもその出来事を思い出してしまい、怖くて仕方が無い、と言う。

 「・・・・それは・・・・・・怖かったな」

 無言で頷くエイトの頭を撫でると、小さく頷く。肩に触れれば、まだ震えていた。

 そんな事情があったと知っていたなら、さっさとクモを払いのけて助けてやれたのに。

 エイトの性別のことと言い、今回のコトと言い。・・・・・・なんだかいろいろと情けないつーか・・・。

 もう少し、エイトに対して気を付けていればよかったのかもしれない。

 女として扱わなくていい、と言われて、なんとなくムキになってたような気もしていたけど。

 ・・・・・・・って。

 そういえば、森で野宿するときは、じっと木を見上げていたりする時もあったけど、アレはクモがいないかどうか、確か
めていたんじゃないだろうか。

 「・・・・・・これからは、さ」

 呟くと、エイトが不思議そうに顔をあげる。

 「アレが出たら、すぐにやっつけてやるから」

 「・・・・・・ホントに? いいの?」

 驚いたように目を見開いて問うエイトに、オレは頷く。

 「ホント。約束する」

 「・・・・・・・ありがと」

 ふわりと笑ってそう礼を言うエイトに、思わずどきりとしてしまう。
 
 泣いたせいか瞳は潤んでいるし、頬もほんのりと朱に染まっている。声も少し掠れているせいで、いつものエイトとは
まったく違う印象。

 ―――かわいい、かも、。

 「・・・・・・・・・・ククー、ル?」

 「・・・え、あ、いや、なんでも」

 やばいやばい。うっかり見惚れて・・・・・・・って、見惚れた!? オレがエイトに!?

 違うだろ、オレ! 見惚れてたんじゃなくて、呆気にとられてたって言うか・・・・なんていうか。

 「?」

 黙りこんでしまったオレに、エイトはきょとんと見上げて小首を傾げる。

 ―――・・・やっぱり可愛い。今のしぐさは、確かに可愛い。

 「・・・・あーもぅ・・・」

 「ククール?」

 どんなに否定してもそう思ってしまうのだから、もう認めるしかないだろう。

 「言わなきゃ良いだけだし」

 「なにを? っていうか、どうしたの?」

 「いや、こっちの話・・・」

 可愛いと思っても、ようは女として扱わなければいいわけだ。 ってコトは・・・・・うん・・・、手のかかる妹。

 そう、思えばいいんだ。よし、これならなんとかなるだろう。

 「なぁエイト。今度からなんか困ったこととかイヤなコトとかあったら、ちゃんと相談しろよ」

 「うん。でも・・・」

 「でもはなし。いいから、オレを兄さんだと思って、頼ってくれよ」

 「ククールが、・・・・僕の、・・・・」

 「あぁ。エイトのほうが年下だし、いいだろ? おまえはオレの妹みたいなもんだし。
 なんなら、おにーさまとかおにーちゃんとか呼んでも良いぞ?」

 冗談っぽく笑っていってやると、エイトは何度か瞬きして口を開いた。

 「・・・おにいちゃん?」

 ・・・・・・・・・・・っ。

 「あ・・・あぁ、なんだ、エイト」

 「ククール、僕のおにいちゃん、になってくれるの?」

 「そ、そうだけど、イヤだったりして?」

 「う、ううん。えっと・・・僕、家族っていなかったから・・・・すごく、嬉しい・・・」

 「そ、そおか・・・」

 「うん。・・・・ありがと、おにいちゃん・・・なんちゃって・・・」

 照れくさいのか、笑って誤魔化すエイト。

 つーか待て。ちょっと待て。どうしたオレ。なんでこんなに動揺してる?

 自分でもわけがわからないまま、とりあえずコレはさっさと寝たほうがいい、と判断してそうエイトに言うと、どこか心細
そうな顔をして、きゅっと腕をつかんでくる。

 「ど・・・・・・ど、どうした?」

 「あ、あのね。その・・・、アレがまたいたら、やだなって、思って・・・。だから、その・・・。
 一緒に、寝てもいい?」






 エイトに対して「兄さんだと思って頼ってくれ」と言った手前、断るわけにも行かず。

 そのまま一緒に眠りについたはいいが、なんかやたらにもやもやしてしまって結局ろくに眠れなかった。

 追記までに述べておくと、エイトが「おにーちゃん」と嬉しそうにオレを呼んだため、ゼシカに訝しがられ、ヤンガスに
睨まれたりして、結構生きた心地もしなかった。

 「仲が良いのは、いいもんじゃ」

 トロデのおっさんの言葉を背に受けて、嬉しそうに「おにーちゃん」を連発するエイトに引っ張られるまま、歩き始めた。


 ・・・・・・なんでこーなる。









 そんなのは私が知りたい(笑)

 アンケートからのアミダで当たった単語が『四万hitのふたり』と『一線越える』でした。

 違う意味で一線越えてしまった気がしますが、四万hitの二人には、これがいっぱいいっぱい
の『甘々』だったみたいです(笑)




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